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妊娠中の感染症について

普段、生活している以上、生き物はいろんなウィルスや菌の中で生きています。
そのため、感染を完全におさえることは不可能ですが、妊娠中の場合はまずほとんどの場合、妊娠してからの初めての感染が問題となり、あかちゃんに対しての影響力を持つといわれています。(いいかえれば、再感染の場合はおおきな問題になることは非常に少ないといわれています)
以下にあげてみましたが、なんといっても問題となることが多いのは風疹です。
そのため、たいていの医療機関では風疹の検査を行っています。

風疹 妊娠初期に初感染すると、かなりの高確率で胎児奇形をおこすといわれています。
ある統計では妊娠1ヶ月で50%、2ヶ月で35%、4ヶ月8%、5ヶ月まではまず発生
するだろうといわれています。(聴力異常、心臓奇形、目異常、その他)
風疹抗体価が16倍以下の方は、妊娠中は人ごみなどは避けて下さい。
32倍から128倍の方は心配はまずはありません
256倍以上の方は、ほとんどが体質的に値が高めというのが原因ですが、やはり近い時期に感染した可能性もあるので再検査が必要となります。
また、ご家族で風疹の抗体がない場合は予防接種をうけていただいてください。また、出産が無事終了されたら、妊婦さんご本人も風疹の予防あるいは追加接種を受けてください。出産後数日以上たっていれば体調がよければ接種は可能です。また授乳中でも特に問題はありません。
水痘 四肢、目、脳などの病気をおこすことがあるが、非常に確率は低い(1%以下) 血液検査で判断します。ただし、ほとんどの成人は抗体をすでにもっているので、大きな問題になることは少ないです。
ただし、分娩前3週間以内に初めて症状が出た場合にはあかちゃんへの胎内感染により25〜50%が新生児水痘を発症します。特に分娩直前の4日〜分娩直後2日に発症したときは非常にリスクが高くなりあかちゃんの死亡率が3割前後になるといわれています。そのため、生後すぐに予防としてグロブリンの投与があかちゃんに必要となります。
トキソプラズマ 昔は猫などの糞便からの経口感染といわれていましたが、今の感染源でよくみられるのは加熱処理不十分な肉や井戸水、土のついた野菜などの摂取です。(糞便からの感染に関しては、動物を触ったとよく手を洗う、などで対処します。現在では自宅で飼う犬猫は問題にならないとされています。こと、妊娠前から飼っていればかなりリスクは低いのです。)もともと抗体をもっている妊婦さんはだいたい20〜30%といわれています。目や脳の先天異常をおこすことがあります。
流産早産の原因となるともいわれています。また、妊娠の時期を問いません。
血液検査などで明らかな初感染が疑われる場合にはアセチルスピラマイシン、アジスロマイシン、ファンシダールなどの投与などが必要となります。ちなみに妊娠前に抗体があればリスクは特にありません。
サイトメガロウィルス 妊婦さんの95%が抗体をもっているといわれています。
ただし妊娠中の初感染により、死産や流産、胎児の脳の疾患、他肝脾腫や黄疸、知能障害などをおこすといわれています。
疑われる場合は血液検査となります。
パルボウィルス 感染により、まれですが胎児水腫がおこることがあります。 疑われる場合は血液検査となります。
麻疹 先天奇形などは増加しないといわれていますが、流産、早産の率が約30%とかなり高くなります。 血液検査NT法で8倍未満の妊婦さんには、出産後のワクチン接種がベターであり、育児期間のあかちゃんへの感染を予防することがベターです。接種は授乳中でも問題は特にないといわれています。
HTLV−1 成人T細胞白血病のウィルスです。
関東地方でのキャリアは1%前後ですが、九州では4〜6%といわれています。問題となるのは、母乳による感染です。
キャリアのひとで実際発症する確率は1年で1300分の1、多くは40歳以上〜70歳くらいで発症するので、実際キャリアで発症する確率は20人から50人に一人くらいです。(ほとんどはキャリアのまま発症しないのです)
キャリアが半年以上母乳をあかちゃんにあげると感染する可能性が高いのです。そのため、キャリアであることがわかれば、母乳を加熱してあげるか、あるいは人工乳のみでの哺育にされることとなります。
HIV 胎盤、産道、母乳いずれでも感染がおこります。 分娩は帝王切開、分娩後母児ともに抗HIV剤の投与が必要となります。
梅毒 胎盤からの感染が重要です 胎盤の完成(16週)までの治療が有効
淋菌、クラミジア 分娩までに治療が必要です 各種抗生剤にての治療
性器ヘルペス 初感染のみでなく再感染や再発も、外陰部や膣などの産道にあると感染がおこります。 ウィルスが産道にある可能性が高い場合には帝王切開が必要となります。
外陰部に症状がある場合、なくても初感染1ヶ月以内、あるいは再発後1週間以内の場合などです。
尖圭コンジローマ ある程度以上の大きさのコンジローマにより産道感染がおこります。 膣壁や子宮頸部に明らかなコンジローマがあった場合には帝王切開を選択する場合もあります。
B型肝炎 胎盤、産道、母乳いずれでも感染がおこります。 分娩してからの血液検査の結果により、HBIGやワクチン投与で発症を予防します。
C型肝炎 産道、母乳いずれでも感染がおこります。約10%といわれていますが、そのうちの約30%のあかちゃんは3歳くらいまでに自然に血液中からHCV RNAが消えます。 分娩してからの肝機能やHCV抗体、HCV RNAなどの経過観察が必要です。